加速する電子のエネルギー分布はべき関数の形になるという経験則(?)がある
スペクトルがベキ関数の形をする場合はだいたい加速が起きたと考えられる
その加速はだいたいが超新星の様な爆発時に発生するショックにより起こる
ここで電子が加速されただけならば、ただ早くなりましたねで終わりとなる
加速された電子が何かしらの放射機構でX線を発生すればそれが観測される
というわけで観測されたX線は電子加速と直接的に関係しているわけではない
放射はだいたい制動放射(シンクロトロン放射を含む)か逆コンプトン散乱
これらの違いを判別するのは難しい
もしこれ以上議論するとすれば…
周囲の状況から光子と磁場のエネルギー密度を比較してどちらが優位か判断
光子のエネルギー密度は伴星や3K背景放射から判断したりするが難しい
磁場のエネルギー密度は星間空間の磁場(10マイクロガウス程度)などが材料
他にも白色矮星の磁場を考えてみると、だいたい以下の様な理論展開になる
Polar (AM Her) ... B > 1000 [T] = 1E7 [G] Intermediate Polar (DQ Her) ... B = 10-1000 [T] = 1E5-1E7 [G] Normal CV ... B < 10 [T] = 1E5 [G]
白色矮星の半径はおおむね Rwd = 1E8-1E9 cm 程度
加速が起きている場所は例えば Rsys = 1E12 cm 程度と仮定
加速地点の磁場はIPなら Bsys = ( 1E6 * ( (1E8)^2) ) / ( (1E12)^2 ) = 0.01 [G]
概算だが 10 mG くらいショックの所で磁場があれば効くのか
厳密には制動放射は「制動(減速)を受けた荷電粒子が出す放射」の事である
しかし一般的にシンクロトロンと区別して「原子により」という意味で使用
ということで加速した電子が物体(原子)に衝突する事で制動放射が発生する
これはシンクロトロン放射や逆コンプトン散乱と比べると放射の効率が悪い
ちなみに熱制動放射は加速ではなく熱運動により電子と原子が衝突する場合
電子の遷移が自由軌道から別の自由軌道なのでFree-Free Emissionと呼ぶ
加速した電子が磁場の影響により減速するとシンクロトロン放射が発生する
加速した環境の回りで磁場が強いとシンクロトロン放射が優位になる
シンクロトロンは「磁場による制動放射」なので、広義には制動放射と同じ
加速した電子が光子(Photon)に衝突すると運動エネルギーが光子に移動する
この場合は赤外線などの低エネルギー光子が叩き上げられてX線を放射する
これを逆コンプトン散乱と呼び、X線放射の代わりに赤外線などでは暗くなる
加速された環境の回りで光子が多いと逆コンプトン散乱が優位になる
光子のエネルギー密度は伴星や3K背景放射から判断したりするが難しい
ベキ関数の傾き(ベキ)は物理量を引き出す為の最も重要なパラメータである
スペクトルの光子強度(Photon-Flux)はPhoton-Index(Gamma)の関数となる
光子強度は I(E) ~= KE^{-Gamma} [photons s-1 cm-2] と書ける
議論を進めるために光子強度をエネルギー強度(Energy-Flux)に変換する
スペクトルのエネルギー強度(Energy-Flux)はSpectral-Index(alpha)の関数
エネルギー強度は F(E) ~= KE^{-alpha} [ergs s-1 cm-2] と書ける
ここでPhoton-IndexとSpectral-Indexの関係は alpha = (Gamma-1) となる
こうして、観測データからはスペクトルのエネルギー強度までが導き出せる
次に、ベキ関数のスペクトルになるような非熱的放射の機構を仮定してみる
例えばシンクロトロンで非熱的な粒子の冷却効果は無視できると考えてみる
シンクロトロンでは電子のエネルギー分布をPとすると alpha = ((P-1)/2)
シンクロトロンでのエネルギー放射強度は F(E) = KE^{-((P-1)/2)} となる
これを、Photon-Indexの形式に書き直すと I(E) = KE^{-((P+1)/2)} となる
Gamma = ((P+1)/2) となるので観測値(Gamma)から電子分布(P)が推定できる
ちなみに逆コンプトンでもシンクロトロンと同じスペクトルの形をしている
もし冷却効果が重要な場合は alpha = -(P/2) より上でブレークが見られる
ベキ関数の傾きから電子がどのような分布をしているかについて議論できる
一般的に単純な1st Fermi-Accelerationで電子分布は P >= 2 程度になる
これをスペクトルのPhoton-Indexに換算すると Gamma >= 1.5 程度となる
高エネ電子が何かしらエネルギー損失したと考えればSteepにするのは簡単
これ以上にFlatな場合は単純な加速を考えるだけでは無理という結論になる
Flatにする1つの可能性としてMultiple Shocksによる再加速が考えられる
弱いショックにより何回も加速されている状態では P = 0 くらいになる(?)
乱気流による2nd Fermi-Accelerationも可能性として考えられる
3つめの可能性としてはMagnetic Reconectionもある
磁気リコネクションなら加速が起きるのはContact Discontinuityではない
放射がベキ関数で近似される場合に光度から得られる情報はあまり多くない
例えば全放射エネルギーを E = 1E45-46 erg 程度と仮定した場合
光度が L = 1E36 erg s^{-1} なら放射期間は 1E9 sec $\sim$ 10000 days となる
これなら爆発による全運動エネルギーに対して十分に小さいので問題はなさそう
光度が L = 1E44 erg s^{-1} なら放射期間は 10 sec 程度ということになる
爆発による全運動エネルギーが10秒程度で全て無くなると考えるのは難しい
この場合はバースト時や加速した瞬間などの一時的な放射と考えられる
電子の最高エネルギーは少なくとも観測されたエネルギー上限値よりは高い
よって少なくとも電子がどのくらい高いエネルギーまで加速されたかわかる
磁場が強い場合はエネルギー散逸などによりスペクトルがすぐに折れ曲がる
どこで折れ曲がっているか観測により判別できれば磁場の強さが決定できる